芋煮会

 今月芋煮会のお誘いを受けたが、スケジュールが既に入っており、残念ながらお断りした。芋煮会といっても関東以南の人にはぴんと来ないであろう。秋に芋煮鍋を囲んで野外で飲み食いする風景は、東北の秋の風物詩である。春の花見に似ているが、もちろん花は関係なく、また期間も9月から11月上旬と長い。

 

 私は山形県育ちなので、小中学校時代は毎年秋に、学校行事として川原で芋煮会が開催された。6~7人の班に分かれ、それぞれが川原の石でかまどを組み、薪に火をつけ、用意した具材で芋煮を作った。薪に火をつけるのが一苦労で、班により出来上がる時間のバラツキが大きかった。

 

 山形の芋煮鍋は里芋、牛肉、醤油味という明確な型があり、その他の具材もネギ、ごぼう、コンニャク、舞茸のほか余計なものは一切入れず、どこで食べても共通のおいしさを堪能することができた。

 学生時代に福島に来て驚いたのは、芋煮の芋が里芋ではなく、じゃがいもを使用していることであった。芋煮というよりはまるで肉じゃがで、軽いカルチャーショックを覚えた。

 その後、福島の芋煮会を観察して分かったのは、福島には芋煮の型がないということだ。芋煮鍋のレシピの自由度は極めて大きいのだが、反面、できた鍋の味はイマイチの場合が多い。また、芋煮会と称しながらカレーを作ったり、バーベキューだけを楽しんだりしているのも、福島の芋煮会の特徴だ。

 

 楽しければ芋煮会であろうと、バーベキューであろうと、具材が何であろうと構わないと思うが、私の心と体に刻まれているのは、秋の川原で食べた山形芋煮の醤油味である。