フレッシュマン

 新年度がスタートし、街中にもフレッシュマン、フレシュウーマン(以下フレッシュマンと略)の姿が目立つようになった。私が就職した頃とは社会環境がだいぶ変ってしまったが、今も昔もフレッシュマンはいかにもフレッシュマンという雰囲気を醸し出している。

 

 私の最初の就職先の配属は仙台市中心街の大型店で、4月1日が初出勤日であった。出勤時間までのわずかな時間を利用して、新しい預金通帳を作ろうと、配属先の正面にあった七十七銀行の本店に入った。新たに通帳を作りたい旨を窓口に申し出ると、窓口の若い女子行員が、「もしかしたら、ダイエーさんの新入社員の方ですか?」と微笑みながら尋ねてきた。私の顔に〝私はダイエーの新入社員です”と書いてあったのであろう。新しい預金通帳が出来上がり、女子行員は、頑張ってください、と笑顔で通帳を手渡してくれた。

 実は、その女子行員の笑顔以外、その日のことはほとんど覚えていない。過度の緊張のためであろうか。

 

 たぶん今年のフレッシュマン達も、30年後には入社した時のことなどほとんど忘れてしまっているであろう。しかし、こういうちょっとした何気ない記憶が、自分の人生に彩りを与えてくれることもある。

 自然な笑顔と思いやりのある言葉。この二つを人にあげられるような記憶に残る社会人になってほしいと願っている。