花見

 春も本番になり、東京や西の方から桜の便りが聞こえてくるようになった。

 

 私は生まれてから大学を卒業するまで、人口密度の高い都市に住んだことがなかった。都会における花見の場所取りのニュース等を目にすると、自分とは遠い世界の悪い冗談だと思っていた。

 大学を卒業して就職先で都会に配属となり、4月のしょっぱなに、それまでバカらしいと思っていた花見の場所取りをさせられた。都会における花見の場所取りは、思っていた以上に大変で、本当にいい場所は、既にビニールシートが敷いてあったり、紐で囲ってあったりした。細かいことはほとんど覚えていないが、最低限の場所取り責務を果たしたことと、夜桜だったので気温が下がり、震えながら花見をした記憶は残っている。

 

 根っからの東北人のせいか、春が来ると心が躍る。