絵師

 仕事に疲れたり、飽きたりしてくると、外をぶらついたり、近所の店を散策したりすることがある。

 先日も、夕方、会社近くの百貨店に入ったら、1階で猫グッズの催事が開催されていて、招き猫やら、猫の鞄やら、猫絵の食器等が多数並べられていた。そこで、ふと目に入ったのが、何やら椅子に座り真剣な面持ちで作業をしている、猫顔の女性であった。その女性の顔を直視して思わず笑ってしまった。顔に猫のマスクをかけていて、本当に猫みたいなのだ。

 

 彼女の名前は中尾少風(なかおこふう)さん。大阪を中心に全国を飛び回っている絵師で、猫や犬等のペット画に特に精通している。今回は猫展ということで、彼女の手書きの猫が描かれた雑貨が所狭しと並べられていた。

 

 私が特に興味を持ったのは、彼女がかけていた猫マスクだ。これは風邪や花粉症等に用いる普通の純白のマスクに、彼女が手書きで猫の鼻や口を描いたもので、無機質な大量生産のマスクを、生命感あふれるユーモア作品に生まれ変わらせている。きっと、こういうものを創り出す人は、自由な発想と遊び心を持っているのであろう。

 

 誰の庇護も受けず、自分の腕一本で世の中を渡り歩く人がいる。理想的な生き方ではあるが、これはこれで大変であろう。しかし、こういった創意あふれる職人は応援したくなってくる。

 

 

 

 

 

左が中尾少風さん

 

 

 

 

 

少風さんの作品