花春酒造

 先日、福島県会津地方の日本酒醸造業「花春酒造」の会社清算と、それに伴う醸造事業の事業譲渡の報道が福島県地元紙の1面で報じられていた。

 花春酒造は平成12年頃までは県内トップの日本酒の生産量を誇っていた。地元紙・福島民報によると売り上げが激減した理由として、価格競争のあおりを受けたとか、東日本大震災後の風評被害等と報じてられているが、果たしてそれだけであろうか。

 

 これは極めて個人的な見解であるが、花春酒造が凋落した理由は、日本酒の味で見劣りしたからに他ならない。

 

 私は酒はあまり強くないが、日本酒は好きである。手頃な価格の日本酒を味わうのは一つの楽しみでもある。

 

 10年くらい前に、花春の普通酒をたまたま手にして口にしたところ、本当に自分の口に合わず、残りを料理酒として使ってしまった。その時以来、花春だけは買わないように心掛けてきた。同じ普通酒でも他においしい酒はいくらでもあるのに、花春のようなまずい酒を選ぶ理由が全くないからだ。

 

 味覚とは感覚的なものであり、難しいものである。

 郡山市に本社のあるラーメンチェーン店「幸楽苑」は、東日本においては大衆に受け入れられ、店舗網を拡大させているが、西日本においては味が受け入れられず、苦戦していると聞いている。

 しかし、それでも味を追求していくというのが、飲食業の宿命であろう。

 

 花春酒造の事業譲渡先は福島県内に本社がある東証一部上場企業と報道されており、花春の看板は残るとされている。しかし、商品の中身が変わらなければ全く意味がない。新しい運営主体には、とにかくおいしい酒を造って、世に送り出して欲しいと願っている。