ダイエット

 “妻に捧げるダイエット腹巻き 2ヶ月で14kgヤセる ”

 新聞の折り込みチラシをめくっていたら、こんな広告が目に付いた。過去から現在に至るまで、やせるクッキー、やせるお茶、やせるスリッパ・・・等々、ダイエット産業は手を変え品を変え、人の心を揺さぶり続けている。共通するキーワードは“らくらくやせる”である。

 

 ダイエット商品の折込チラシで不思議なのは、これほどダイエットグッズが氾濫しているにも関わらず、ダイエット産業の広告が競合しないことだ。先々週はやせるお茶で、先週はやせるサンダルで、今週はダイエット腹巻き等と、毎回毎回、品を替え順番に出てくることが巧妙である。車や学習塾、パチンコ店等のように、特定の曜日に一斉に広告を打つようなまねはしない。客は生かさず殺さず、長くつなぎとめるという業界の考え方が透けて見える。

 

 私は10年位前までは現在より10kgくらい太っていた。会社の健康診断で引っかかり、医者からこのまま痩せなければ将来確実に糖尿病になると言われ、ダイエットを決意した。

 

 ダイエットをするにあたって、まず、その道の専門家(主に大学教授)の本を4、5冊ほど読んだ。どの先生の言っていることも基本的には同じで、ダイエットとは食事の管理と適度な運動(つまりウオーキング)の2つに尽きるということである。各先生の主張の違いは、食事と運動のどちらに比重を置くべきかという違いだけである。たとえば、食事管理重視派の先生は、フルマラソンのように激しい運動をしたところで消費できるカロリーは限られているので、痩せるためには食事の管理をより重視しなければならない、と主張する。逆に運動重視派の先生は、食べる欲求は根源的なものであり、食事管理は非常に困難なので、運動を重視すべきである、と主張する。いずれにしても、ダイエットで重要なのは、食事を管理し(余計なものを食べず、食べ過ぎないこと)、運動(ウオーキング)を良くすることである。つまり、それは自分自身の生活習慣を変えるということにほかならない。

 

 私が実際にダイエットを始めたのは、確か40歳のときの4月1日からであった。とにかく良く歩いた。平日で1万歩、休みの日は2万歩以上歩く日もあった。同じ道ばかりを歩いても飽きるので、休みの日にJRで近くの駅に下り、次の電車が来るまで(30分~1時間位)駅周辺を歩くとか、妻に車で郊外の住宅団地まで送ってもらい、自宅まで歩いて帰ってくるとか、本当によく歩いたが、全く苦に感じなかった。車に乗っていては見えない景色が見え、いままで気づかなかったことに気付き、何よりも歩くということは自分自身と向き合うことであった。今は当時ほど歩かないが、歩くことは自分のベーシックな生活習慣となり、歩かない自分は自分ではないとさえ思っている。

 

 食事管理については、3食をきちんと食べ、間食は一切やめることにした。ご飯はおかわりをせず、その代り野菜は食卓にあるものを全て平らげるくらい、がつがつ食べた。空腹感はほとんど感じず、間食をしたいとも思わなくなった。晩酌のつまみもやめた。食事についても全く苦しんだ記憶はない。

 

 毎日デジタル体重計に載り、体重を測定し、方眼紙に記録し、折れ線グラフにした。というと難しいことと誤解されるのだが、これは至って簡単なことで、今日の体重が65.5kgであったら、65.5kgの位置に赤ペンで点を打ち、昨日の体重と赤線で結ぶだけである。時間にして30秒足らず、毎日これを続ければ、折れ線グラフが自然と伸びていく。最初は体重がどんどん下がっていくが、その内あまり下がらなくなる。停滞期は2~3週間くらい続き、それを過ぎるとまた体重が下がる、そしてまた停滞期が来るのだが、ダイエットを続ければ続けるほど停滞期が長くなるので、途中であきらめ、ダイエットを止める人も少なくない。

 

 結局、私は4月から11月までの8か月間で約10kgの減量に成功した。リバウンドはなく、現在も基本的に、体重は変わっていない。成功の要因は、ダイエット産業には全く頼らず、自分の意志で自分の食事と体重を管理し、ウオーキングを習慣にしたことである。つまり、生活習慣を変えたのである。

 

 ダイエット腹巻きにしても、フィットネスクラブにしても、エステにしても、ダイエットを自分以外の人や物に頼るという点においては、全く同類である。これらのダイエット産業にいくら投資をしたところで、自分自身の生活習慣を変えない限り、リバンドを繰り返し、ただ歳をとっていくだけである。

 

 しかし、ダイエット産業の広告に出てくる、使用前の女性の写真と使用後の写真は本当の実物なのだろうか。こういう言い方は語弊があるかもしれないが、超肥満体のいかにもさえない女性が、3か月後にスレンダーなセクシー美女に変身してしまう、こういうことって、本当にあるのかな?合成写真なんじゃないのかな?一度実物にお会いしたいものです。