不動産競売

 先週、裁判所の執行官と郊外の戸建て住宅へ、競売の現地調査に行った。築4年程度の新しい住宅だが、早くも住宅ローンが滞り、債権者が競売の申し立てをしたらしい。予定の時間に現地に赴いたが、留守で誰もいないようである。予定の時間を過ぎしばらく待つが、一向に来る気配はない。実は1週間前にも同じように執行官と調査に来たが、空振りであった。次回は3回目であるが、その次はない。こちらも仕事で来ている以上、悠長なことを言ってられない。次回は鍵屋を連れていくことになる。そして、もしも鍵が閉まっていて中に入れなければ、強制的に解錠し、立会人の立ち合いの下、物件内部を調査することになる。

 

 不動産競売制度は、不動産を担保にした融資制度を陰で支えている。住宅ローンや企業への貸付等、銀行等の金融機関は不動産を担保に資金を貸し付け、債務者の返済が滞るようなことがあれば、担保不動産を差押え、強制的な売却により債権の回収が図られることになる。もしも競売制度が名ばかりの不完全なもので、競売がきちんと執行される保証がなければ、金融機関は容易に融資を行わなくなり、日本経済は停滞するであろう。国にとってお金の流れは血液みたいなものだからである。

 

 競売の場合、債務者(もしくは所有者等の占有者)が非協力的な場合も少なくない。不動産が強制的に売却されて所有権を失ってしまうことと、売却代金のほとんどは借金の返済に充当され、債務者にお金が残ることはほとんどないからである。

 

 競売になってしまう家に一つの共通点がある。家の中が汚いということだ。物が散乱している程度はまだいいほうで、中には本当にごみ屋敷みたいなものもある。床に物やごみが堆積していることもあるが、こちらは仕事上、床が畳かフローリングか等、一部屋一部屋確認しなければならない。ごみをかき分け、物をひっくり返し、床を確認するのだが、異臭が鼻をつくこともある。もちろん競売物件の全てが汚い訳ではなく、例外はいくらでもあるが。

 

 家が汚いというのは、日常生活の一つのルーズな側面であるが、一つのことに関してルーズな人は、ほかのことに関しても同じようにルーズである場合が多い。結局、生活や時間等にルーズな人は、金銭に関してもルーズなのではないだろうか。

 

 冒頭の現地調査の話に戻るが、結局その後、債務者(所有者)と連絡が取れ、債務者立会いの下、物件調査を行うことができた。債務者の話によると、裁判所から郵便物が届いていたが、中身を空けずに放って置いたので、自宅が競売になっていることすら把握していなかったとのことである。郵便物を空けずに放って置くような投げやりな態度も、この類の人に見られる典型的なパターンの一つだ。

 

 彼(債務者)が言うには、滞っている債権者への支払いを返済して、債権者に競売の申し立てを取り下げてもらう意向であるとのこと。年齢は30代半ば位、奥さんと小さい子供が2人、庭には愛犬が繋がれ、まだ新しい住宅の玄関にはクリスマスの装飾が飾られている。

 一度競売になりかけた物件が、再度競売になるケースは珍しくない。彼には、二度と我々が訪れることがないように、現実と真摯に向き合い、住宅ローンの借手としての責務を地道に果たしてほしいと願っている。