あせるな住宅取得

 裁判所の仕事で、競売物件の調査に行く機会が多い。競売になる一般住宅の多くは、住宅ローンが払えなくなって金融機関等に抵当権を実行されるケースである。所有者が職場でリストラにあったり、事故や病気等で働けなくなったりして、住宅ローンを払えなくなってしまうからだ。住宅ローンを組んでから10年以上経過してから支払いが滞るケースが多く見られるが、早いものでは5~6年程で支払い不能になり、競売になってしまう。

 

 「いまが買い時です!」等と住宅展示場やモデルルームの営業マンに急かされたことはないだろうか。消費税が上がる前の今がチャンスですとか、金利の低い今のうちにとか、住宅ローン減税が使える今のうちにとか、・・・。

 2年前の夏、消費税増税を前にして、住宅需要は一つのピークを迎えていた。需要と供給の原則により、需要が増えると売り手は強気になり価格は上昇する。この時期に締結された住宅の売買契約は、被災者需要と重なったこともあり、おおむね高水準の価格で締結されており、消費税増税の3%分など軽く吹き飛んでしまいそうなくらいであった。

 消費税が上がり住宅需要が下火になればなったで、国は住宅ローン減税等税制面での様々な優遇措置を打ち出したりする。

 

 結局、住宅の買い時などないのである。住宅の買い時を決めるのは、不動産業者やハウスメーカーでもなく、また国でもない。自分自身である。自分自身が買い時と判断した時が、買い時なのである。

 

 家を所有することによる、喜び、幸せ、満足感そして優越感等、その効用を否定するつもりは全くない。しかし、住宅ローンを組むことによるリスクやデメリットも冷静に考えたいところだ。

 10年後、20年後の自分はどうなっているのか?自分は本当は何をしたいのか?家を建てる前に優先すべきことはないのか?住宅建築をあおる周りの雰囲気に流されていないか?自分自身の頭でよく考えることが重要である。

 

 住宅ローンで家を買うということは、重いタンスを背負って長い道のりを歩いてゆくようなものである。最後まで歩き切る自信がなければ、無理をしないほうが賢明である。まずは自分自身の市場価値を高め、十分な体力を蓄えることが先決だ。家を建てて却って理不尽な生活を強いられるくらいなら、買わない方がましである。マイホームは、人生をより良く生きるための一つの手段でしかないないのだから。

 あせるな住宅取得!